天理教の葬儀などに参列する際、お供え物を持参することがあります。
天理教は、仏式や神式とは異なる宗教のため、参列の仕方に不安を感じる方も少なくありません。
今回は、天理教とはどのような宗教なのかを知り、その上で、天理教にふさわしいお供え物や、祭壇にお供えする物、天理教でのマナーなどについて解説していきたいと思います。
最後に、Q&A式での解説も行っておりますので、そちらまで記事を読むと、より理解が深まると思います。
天理教とは?
天理教は、江戸末期である天保9年(1838)に、中山みきが教祖となり設立されました。
日本国内だけではとどまらず、海外を含めて120万人以上の信者数をほこる日本発祥の宗教団体です。
天理教の目的
天理教の目的は、人間が互いに助けあって生きる「陽気ぐらし」の実現を目指しています。
発祥の元である奈良県天理市は、日本唯一の宗教都市としても有名です。
神道系の宗派との違い
戦時中は、政府との関係などにより、教派神道の一派でした。
ちなみにですが、神道系の多くは、「多神教」であることに対して、天理教は「天理王命(親神様)」を神様とする一神教という違いがあります。
そのため、天理教独自の考えや行事が多く存在するのも特徴になります。
にをいがけ・・・天理教の教えを人に説き信仰を広めるための活動
こどもおちばがえり・・・世界中のお子さんたちが「ぢば」(天理教の礼拝の目標)へ集まるお楽しみ行事
祭典や行事などは、天理教の教会で行うことがほとんどのため、信者やよふぼくでなければ、関わる機会は少ないかもしれません。
天理教の死生観
天理教では、人の死のことを「出直し」と言います。
これは、天理教の特有の教えで、この身体は親神様からの「かりもの」であり、寿命が来たら神様に身体をお返しすることを指します。
出直しの語は、元来「最初からもう一度やり直すこと」を意味することからも察せられるように、死は再生の契機であり、それぞれの魂に応じて、また新しい身体を借りてこの世に帰ってくる「生まれ替わり」のための出発点であることが含まれています。
葬儀や祭事(仏教でいう「法事」)の作法は宗教・宗派で異なりますが、お供え物に関しては神式や仏式などと似た点もあるので、知っておきましょう。
天理教のお葬式でのお供え物
親族持ち込みのお供え物
神棚にお供えするのとは別に、親族が持ち込んでお供えする場合には、基本的に「消え物」を推奨します。
消え物とはつまり、食べるとなくなる飲食物や使うとなくなる日用品などのことです。
食べ物や飲み物であれば、菓子折りや果物、乾物、お茶などがよいでしょう。
仏式と天理教のお供物の違い
天理教では、酒と魚をお供えできることが、仏式と大きく異なる点です。
天理教の祭事では、必ずと言っていいほど、酒と魚は供えます。
遺族が好むことが分かっていれば、日本酒やお菓子などをお供え物として持参するのもよいでしょう。
このような、親族が消費するようなお供物は、先程の八足の上に乗せるお供えとは別に、庭積として置かれることが一般的です。
祭壇にお供えする物は?
葬儀や祭事の際には、親族が持ち合わせるお供え物の他に、神棚に飾るお供え物をするのが一般的です。
祭壇にお供えする物は、基本的に
- お神酒
- 米
- 魚
- 生鮮食品の野菜
- 生鮮食品の果物
ですが、そこに先ほど説明した親族のお供えや故人が好きだったお菓子などをお供えすることもあります。
NGなお供え物は?
神式にも、天理教にも、線香や焼香など、いわゆる「香」に関する儀式がなく、線香や抹香などは不要とされています。
そのため、お供え物として贈るのは避けると良いでしょう。
「灯」は、ろうそくの意味ですが、こちらも天理教の葬儀などでは使用しないのが一般的です。
仏式において線香は場を清めるもの、ろうそくは仏様の御心であり、道しるべとなるものとして大切にされています。
しかし、天理教では仏様ではなく「天理王命(親神様)」を神様としているため、仏式とは異なる点も多いです。
祭事に参列する際は、宗教の教えや行事を理解し、お供え物もよく考えて選ぶことが必要です。
天理教の葬儀や霊祭(法事)のマナー
天理教の葬儀などに案内された際に、自身が異なる宗教・宗派だった場合、戸惑うことが多いかもしれません。
天理教の儀礼は神式を基本とし、仏式でいうところの香典や年忌法要などの語句は、それぞれ「玉串料」と「年祭」になるなど違いがあります。
ここでは、天理教の祭事に参列する際の基本的な作法やマナーについて説明していきたいと思います。
お悔やみの言葉を言わない
天理教では.特有の死生観により、「お亡くなり」という言葉は使わず「出直し」と言葉を使います。
「死」は、悲しみや悼むことではないとされ、基本的には、仏式のようにお悔やみの言葉を伝えないのが一般的です。
みたまうつしの儀
天理教の特徴として、通夜のことを「みたまうつし」と呼び、「みたまうつしの儀」が執り行われます。
これは、死をもって魂をいったん神様にお返ししたのち、新たな肉体に生まれ変わるまで霊代(みたましろ)に移しておくという儀式です。
葬儀やみたまうつしは、故人を悼む場というよりも、新たな出発や再生の節目として考えられています。
服装と携行品
基本的には.仏式や神式と大きく変わらず、一般的な喪服であるブラックフォーマルを着用し、小物も黒色で合わせます。
- ブラックスーツ
- 黒のネクタイ
- 黒の革靴
- 黒のワンピースやアンサンブル
- 黒のストッキング
- 黒のパンプス
- 黒系のバッグ
アクセサリーは不要ですが、結婚指輪はつけたままでも構わないとされます。
香典(玉串料)は神式に準じる
天理教の香典は神式と同じく「玉串料」と呼ばれます。
「香」は使わないため香典とは言わず、表書きについても神式に準じ「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などと記します。
玉串料を入れる白の封筒は無地とし、蓮の花の絵柄が施された封筒は、仏式になるためあまりおすすめできません。
水引は黄と白、黒と白、または銀色一色の物を使い、水引のかたちは結びきりを選びます。
お供え物の掛け紙の表書きは?
お供え物に使う掛け紙も忘れずにつけましょう。
こちらは「御供」「奉献」などと記します。
右上にのし(あわびの絵や飾り)がついている掛け紙は.祝事の際にかけるもののため、弔事にはあまり適していません。
また、お供え物は紙袋に入れて持参し、喪主に渡す際に取り出して手渡しします。
これは、仏式でも神式でも同様のマナーであるため、覚えておきましょう。
【Q&A】天理教式の葬儀のあれこれ
- 供花はどんな種類を選べばいいの?
- 天理教の葬儀には、お花を贈るのも良いとされており、供花は神式に準じた、白や黄色の菊などが一般的です。
葬儀などの際は移動のしやすいフラワーアレンジメントや花束を贈り、霊祭や五十日祭などには、アレンジメントのほか鉢植えを贈ると、祭壇などに飾りやすく喜ばれます。
仏式においては、四十九日までは白のみの花がよいとされますが、天理教では黄色の花も飾られます。
ただし天理教とはいえど、地域差もあるため、場合によっては相手先に尋ねることも大切です。
- 祭壇や神棚にも香りと灯りは必要?
- 先程の「NGなお供え物は?」のところでも紹介した様に、葬儀の場であっても、ろうそくや線香などは用いないのが習わしです。
仏式でいう焼香と似た儀式として「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」という儀式を行います。
玉串とは、榊や杉などの木の枝に白い紙や綿を麻で結んで作られており、参拝者や神職が神前に捧げるものです。
玉串奉奠は「祈る人の気持ちを玉串にのせて神に捧げる」ため、祭事の際は心を込めて行いましょう。
- 念珠は不要?
- 天理教の葬儀では、念珠は不要です。
- 天理教では、戒名はあるの?
- 仏式では戒名が与えられますが、天理教では、神式と同様に「諡(おくりな)」が授与されるのが特徴です。
男性の場合は、名前の後ろに「大人(うし)」という呼び名がつけられ、女性の場合も男性と同様に名前の後ろに「刀自(とじ)」という呼び名が、名前の後につけられます。
仏式の戒名は、僧侶にお布施を渡して依頼しますが、天理教では諡(おくりな)を頂くためのお礼を渡すことがないのも、仏式と大きく異なる部分でしょう。
まとめ
- 天理教の目的は「陽気暮らし」である
- 天理教では、人の死のことを「出直し」と呼ぶ
- 親族が持ち込んでお供えする場合には、基本的に「消え物」を推奨
- 香典や年忌法要などの語句は、それぞれ「玉串料」と「年祭」になるなど違いがある
- 通夜のことを「みたまうつし」と呼び、「みたまうつしの儀」が執り行われる
- 天理教の葬儀では、念珠は不要
- 焼香と似た儀式として「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」という儀式を行う
- 神式と同様に「諡(おくりな)」が授与されるのが特徴